日比NGOシンポジウム

日比NGOシンポジウム

日比NGOシンポジウムの開催

日比NGO間、および他セクターとの情報の共有と連携の構築を目的とし、2010年度末までに「日比NGOシンポジウム」を計3回(2006年マニラ、2008年東京、2010年ダバオにて)開催しました。

第1回シンポジウムは、フィリピン・タギグ市で開かれ、ここではフィリピンの貧困削減に向けて、日比NGO間の共通認識を見出し、協働することを確認しました。このシンポジウムを機に、JPNとPJPが設立され、協働に向けて動き出しました。

第2回シンポジウムは、東京で開かれ、フィリピンのNGO関係者23名が招待され、日比のNGO関係者が広く顔を合わせ、協働事業の具体化にむけて積極的に話し合いました。また、在日フィリピン人が抱える課題について取り上げ、NGO関係者と市民の間で理解を深めました。

第3回シンポジウムは、フィリピン・ダバオ市で開かれ、「日比NGO協働基金構想」の実現に向けた話し合いが行われました。また、「フィリピン残留日本人」や「戦前の在フィリピン日本人」に関するテーマが取り上げられるなど、日比の歴史と人的交流について幅広く、相互理解を深めました。

これらのシンポジウムには、フィリピン支援に関わる日比NGO関係者、政府・財団関係者、大学教員・学生等が参加してお互いの活動や共通の達成目標について理解を深めた結果、新しい連携が築かれ、協力の輪が広がっています。

第1回 日比NGOシンポジウム 2006年11月24日~26日(フィリピン、マニラ)
テーマ:「2015年の貧困削減達成目標に向けた日比NGOパートナーシップ樹立を目指して」

第2回 日比NGOシンポジウム 2008年7月17日~19日(日本、東京)
テーマ:「ミレニアム開発目標に向けてフィリピン貧困層のエンパワーメント―日比NGOのパートナーシップ構築―」

第3回 日比NGOシンポジウム 2010年8月25日~27日(フィリピン、ダバオ)
テーマ:「専門知と経験の共有~地域開発における日比NGOの連携~」

第1回日比NGOシンポジウム 開催報告(2006年11月24~25日)

テーマ:「2015年の貧困削減達成目標に向けた日比NGOパートナーシップ樹立を目指して」
開催地:フィリピン、マニラ首都圏タギグ市
会 場:マーケット・マーケット、トレード・ホール
参加者:両国NGO(フィリピンから50団体、日本から13団体)、政府関係者を含め約150名
背 景:日比両国間の「国交正常化50周年」にあたり、日比友好年と位置づけられた2006年、「第1回日比NGOシンポジウム」を開催し、フィリピンの貧困層支援に携わる日比両国のNGO関係者が相互に活動を紹介し、理解を深め、パートナーシップの構築について話し合いました。
成 果:
両国NGO関係者は、フィリピン貧困層の人々のエンパワーメントと国際社会が掲げる「ミレニアム開発目標(MDGs)」の達成に向け、協働することを確認しました。
日比NGOの現状を認識し、日比NGOの協働のあり方について提言を行いました。
日比の歴史的関係と日本の開発援助政策について理解を深め、日本のODA(政府開発援助)の有効的な活用について具体的な提言を行いました。
このシンポジウムを契機に、日比NGOの連携構築に向けた具体的な活動が始まり、その後の「日比NGO協働基金」、「分科会活動」などへの発展の基盤が作られました。

シンポジウムの様子(概要)

◆第1回日比NGOシンポジウム1日目(2006年11月24日)

歓迎の辞 フランシス・ルーカス師
共催者を代表してPJP代表のフランシス・ルーカス師は、参加者に歓迎の挨拶を行いました。ルーカス師は、活気あるフィリピン市民社会の構築に向け、支援を行う日本の人々に謝意を述べるとともに、「将来の日比関係に向け、これまでなされてきた日比のNGO間の関係をさらに育んでいきたい」と話しました。

開会の辞 山崎隆一郎駐比日本国大使(当時)
山崎隆一郎駐比日本国大使(当時)から開会の挨拶がありました。山崎大使は、「本シンポジウムは、日比友好50周年の祝賀行事のひとつであり、フィリピンの今後の発展に向けて、両国の関係がもたらす役割を信じている」と述べられました。

<基調講演>

コラソン・C・アキノ  故フィリピン共和国大統領(代理人 ラパ・ロパ氏)
当日基調講演を行う予定であったアキノ氏が急用で欠席されたため、代理としてラパ・ロパ氏が、アキノ氏のメッセージを代読されました。日本の政府開発援助が賠償と長期低利の円貸し付けに始まり、経済協力と開発の促進、さらに人道主義的開発と人間の基本的ニーズへの対応と発展してきた流れに触れ、その中でフィリピンのNGOが重要な役割を果たしてきたことを説明しました。そして、フィリピンの貧困問題の解決に向けて、NGO同士の協力と戦略的な活動が必要であることを強調し、「最終的に私たちが望んでいることは、世界の平和と安定が持続していくよう貢献できるフィリピンという国です。一緒に行動を起こしましょう」と会場に向けて語りかけました。

<発表:貧困削減へのNGOの展望と経験>
PJP事務局長のシスト・マカサエット氏(CODE-NGO専務理事)がフィリピンのNGOsについて、JPNからは伊藤道雄事務局長(ACC21代表理事)がフィリピンで活動する日本のNGOsの現状と課題を発表し、日比両国のNGOの概要と共通課題について理解を深めました。マカサエット氏は、フィリピンのNGOが抱えている課題は、運営の強化と次世代のリーダーの育成であり、それらの問題解決のためにNGO同士が協力していくことが必要であると述べました。

<ワークショップ:フィリピンの貧困削減に向けてフィリピンと日本の共通認識を見いだす>

フィリピンと日本の参加者が小グループに分かれ、以下のテーマで意見交換とグループからの提言をまとめました。日比の参加者が共に話し合い、答えを出すという協働作業となりました。

◎ フィリピンの貧困の主要な要因について
「資源分配の不公平さ」、「教育が不十分」、「政府機関の汚職」など

◎ 日比のNGOが協働できる点
「教育や価値観をしっかり根付かせる」、「関係者、およびコミュニティの能力向上、「市場の創出」など

◎ 日比が協働する意義
「教訓、リソース、ノウハウの共有によって相乗効果が起こる」、「より深い理解と相互関係を築く」など

<発表2:再生可能エネルギーに関するBEST-OF-PREN計画の開始>
ベロニカ・ビラビセンシオ氏(Peace and Equity Foundation専務理事)
ビラビセンシオ氏は、フィリピン政府とPeace and Equity Foundationによる「再生可能なエネルギー」に関する協働事例を紹介しました。プログラムを全国的に進めていくための経費を政府だけでは賄えないため、NGOとの協働が必要だと語りました。

◆第1回日比NGOシンポジウム2日目(2006年11月25日)

<発表:賠償の関係から協調の関係へ-日比関係の50年>
南山大学 吉川洋子教授
吉川教授は日比の歴史的関係と日本政府の対比開発援助政策について発表し、発表の最後に、フィリピン人による一般的な日本人観に触れ、「(アンケート調査によると)約3割のフィリピン人が戦争のことを決してわすれないだろう回答。日本側の努力なくして、フィリピン人たちの印象がよくなることはない」と述べました。日比の歴史を振り返り、JPNとPJPの今後の関係について考える場となりました。

<発表:パートナーシップのあり方を探る>
これまでに行われてきた日比NGOによる協働事業の事例発表を、(特活)ビラーンの医療と自立を支える会、(特活)ACTION、財団法人オイスカの3団体が発表しました。発表の後、松浦宏二氏((特活)チャイルド・ファンド・ジャパン)が、他3団体の事例を加えて分析を行い、今後の日比の協働関係において「共通する目標やテーマを発展させること」、「成功事例を全国的に広げること」などを提案しました。

<発表:新しいパートナーシップ支援に向けて:
開発に関するフィリピンと日本のNGOに共通の目標・テーマ・支援を探る>

ファイナ・ルセロ・ディオラ氏(ACTフィリピンデスク)(当時)
このシンポジウムのためにPJPが情報収集・調査研究を行ったテーマ:日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力(GGP)」に関し、その概要と課題についての調査結果を発表しました。ディオラ氏は、調査の結果浮き彫りになった課題から、「(日本の対比政府開発援助)政策として日本大使館のGGP支援を増やすこと」、「GGP支援の割り当ての中で75%の資金をNGOが確保できるようにすること」を提言としてまとめ、「NGOのための新しい資金調達の仕組みを大使館が進めること」を提案しました。

<ワークショップ2:目標やテーマを行動へ>

長期的展望に基づいた日比NGOによる具体的な協働について、ワークショップ形式で意見交換を行い、長期的に(1)PJPとJPNの協力関係の継続・促進、(2)他の二国間協力モデルの研究、(3)知識や実践の集積などを行うという意見が集約されました。また、2007年度の目標とテーマとして、(1)日比双方の対話の継続、(2)組織化と全国レベルへの拡大、(3)日本政府の開発援助のうち「草の根・人間の安全保障無償資金協力(GGP)」への割り当ての増大を求めることなどが盛り込まれました。

第2回日比NGOシンポジウム 開催報告(2008年7月17日~19日)

テーマ:「ミレニアム開発目標に向けてフィリピン貧困層のエンパワーメント ―日比NGOのパートナーシップ構築―」

開催地:東京
会 場:日本青年館(東京都新宿区)、国際文化会館(東京都港区)
参加者:両国NGO(日本から約60団体、フィリピンから21団体が参加)、政府関係者、
一般市民 約200名
背 景:2006年11月に開催した「第1回日比NGOシンポジウム」での行動計画をもと
に、日比NGO間のさらなる相互理解の促進、協働関係のさらなる構築、「日比NGO協働基金」の実現に向けた理解者・支援者の拡大、日比の市民社会セクター間の協力の輪の拡大を目的として、実施しました。
成 果:
フィリピンの現地NGO23団体が参加し、日本のNGOの実態と日本社会についての理解を深めました。
日比NGO間の協働事例を紹介・共有し、分科会では協働事業の具体化に向けて積極的に意見交換を行い、各分科会で行動計画がまとめられました。
基調講演者、来賓としてフィリピンからホァン・フラビエー氏(前フィリピン上院議員、フィリピン保健長官、NGOリーダー)、在日フィリピン共和国大使、日本からは現職の国会議員を招き、両国のNGO活動についての理解と支持を得る機会をもちました。また、日本の対比ODA実施の中核となっている日本の外務省と国際協力機構(JICA)関係者との対話の場を設け、相互理解を促進しました。
日本に滞在するフィリピンの人々と一般市民の参加を得て、フィリピンからの出稼ぎ労働の実態について、NGO関係者と市民の間で理解を深めることができました。
「第1回日比NGOシンポジウム」で提案された行動計画に沿い、今後の行動計画を「東京宣言(PDF)」としてまとめました。同宣言には「日比NGO協働基金」構想が明記され、実現に向けた具体的な活動を開始することを日比NGOが確認しました。

シンポジウムの様子(概要)

◆第2回日比NGOシンポジウム1日目(2008年7月17日)
<開会式>
開会式では主催者挨拶後、中山太郎衆議院議員(日比友好議員連盟会長(当時))と、在日フィリピン共和国ドミンゴ・シアソン大使(当時)より来賓挨拶があり、メッセージが寄せられました。

<基調講演>
「民主主義と貧困者のエンパワーメントとNGOの役割:日比NGOへの期待」
ホアン・フラビエー氏(前比国上院議員、比国保健長官、NGOリーダー)(当時)

ホァン・フラビエー氏(前フィリピン上院議員、フィリピン保健長官、NGOリーダー)(当時)は、「貧困の現状は収入だけで測ることは困難であり、貧困削減には経済面、社会面の両方の視点が必要である」と述べ、「NGOは行政や私企業と連携を行い、開かれた活動をするべきだ。事業の運営にしても、受益者が意思決定に参加できるような仕組みが必要である」と会場に語りかけました。

「日比市民セクター間のパートナーシップの構築と政治の役割」
広中和歌子氏(参議院議員(当時))

広中参議院議員(当時)は、「ODA予算が削減されるなか、ODAの質の向上のためには住民と身近で活動するNGOとの連携が必要であり、国際協力の中でのNGOの役割は大きいものがある」と、NGOへの期待を語りました。

<パネル・ディスカッション:NGOは期待される役割をどのように果たせるか?
NGOの役割と日比両国市民セクター間の協働>

司会 東京大学教授 吉田恒昭氏
日比NGO関係者3名と外務省から1名をパネリストとして迎え、パネル・ディスカッションを行いました。パネリストは日比のNGO間の協働や、NGOと行政・産業界との協働事例を紹介し、日比のNGOが目的とする貧困削減・社会開発に向け、NGO間やNGOと他のセクター間でパートナーシップを構築する意義について考える場となりました。とくに、外務省からのパネリストは、「対比国別援助計画に”NGO”という用語が6箇所使われており、それはフィリピン国のNGOの能力を認め、NGOとの連携の必要性を認識したものである」と説明され、今後、援助計画を実施する上でのNGOの役割が強調されました。

<7月17日午後、18日午前 日比NGO関係者会議
分科会1:分野別協議~協働の現状と課題と将来への展望>

日比NGO関係者会議分科会1
日比NGOが分野別のグループ:「子どもの教育」、「子どもの健康(母子保健)」、「農村・農業開発」、「少数民族」、「平和構築」、「在日フィリピン人(特別分科会)に分かれ、協働の現状と課題、さらに将来への展望について意見交換を行いました。

1日目は本会場で、2日目は分科会ごとにNGO事務所やJICA本部などに訪問して意見交換を行いました。各分科会とも、活発な意見交換と情報交換ができ、双方のNGOにとって、相互理解と知見を深めるものとなりました。また、今後の必要な方向性についても話し合うことができました。

<7月18日夜開催 特別分科会「在日フィリピン人の現状と課題」>
特別分科会「在日フィリピン人の現状と課題」

6団体・個人より、在日外国人労働者の直面する問題と支援活動について発表がありました。「低賃金などの劣悪な労働環境」「生活面での不便さ」「労働者自身の認識の違いや知識不足」などの課題が挙げられ、在日フィリピン人労働者数名が自らの苦しい現状を会場に訴えました。日比NGO関係者にとって、問題を理解し、支援活動の重要性を認識する機会となりました。[一般参加者を含め約80名の参加]

<7月18日午後 分科会Ⅱ:「日比NGO協働基金」構想と日本のODAと民間資金>

外務省国別開発協力第一課から担当官を迎え、「対比国別援助計画」の説明を受けた後、日比NGO参加者との活発な質疑応答、意見交換を行いました。[日比NGO関係者約80名が参加]

<7月19日午前 公開セミナー「フィリピン人と家族の絆-コトブキ、デカセギ、コクセキ-」>

「東京フィリピン研究会」と共催で行った一般公開セミナーの第一部では、映画「DEKASEGI」上映と監督のレイ・ベントゥーラ氏の講演、第2部では、在日フィリピン人支援を行うNGO関係者2名を加え、「在日フィリピン人の現在と子どもたちの未来」をテーマに、パネル・ディスカッションが行われました。会場からは、「NGOと行政が連携する必要がある」などの意見が寄せられました。また、参加したホァン・フラビエ フィリピン共和国前上院議員は、フィリピン側における根本原因の解決に向けた努力が必要であると述べました。
[一般参加者含め約130名が参加]

◆第2回日比NGOシンポジウム2日目(2008年7月19日)

<7月19日午後 日比NGO関係者会議と閉会式>
過去3日間の総まとめとして、分野別分科会でまとめられた意見や提言内容の発表と、「日比NGO協働基金」構想検討会からの報告を行いました。最後に、日比NGO間で合意された「東京宣言」が発表され、会場での議論の後、同宣言が採択されました。

〔※本シンポジウム開催にあたっては、次の団体・個人より資金助成を受けました。
(財)MRAハウス、(財)大竹財団、(社)東京倶楽部、立正佼成会一食平和基金、Peace and Equity Foundation、 Ramon Aboitiz Foundation、 AY Foundation、主催団体JPN会員・関係者〕

※本ページでは、シンポジウム当時の役職名を記載しています。