HOME > JPNニュース > 学習会「知っているようで知らない、ストリートチルドレンの現実」を開催しました

学習会「知っているようで知らない、ストリートチルドレンの現実」を開催しました

2020年04月24日

学習会「知っているようで知らない、ストリートチルドレンの現実」を開催しました


 2020年2月25日(火) 、「知っているようで知らない、ストリートチルドレンの現実」と題した日比NGOネットワーク(JPN)の学習会を開催しました。講師として、(特活)国境なき子どもたちの理事であり、人道写真家としても活動されている清水匡氏と、(特活)アジア・コミュニティ・センター21の広報で「フィリピンの路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」を担当する辻本紀子氏の2名をお招きしました。清水氏が撮影したフィリピンの子どもや若者の写真を展示したことで、2019年度の過去3回の学習会とは異なる環境の中での開催となりました。大学・大学院生10名、私企業、NPO職員、公務員を含めた社会人9名、合計19名の参加者とともに、学び合い、語り合いの「場」をつくることができました。

~ 国境なき子どもたち・清水匡(きょう)氏 ~

shimizu0225.jpg

 路上で生きるとはどういうことでしょうか。路上で暮らす子どもの中には親がいる子も、そうでない子もいます。食べ物を買えない子どもは空腹を紛らわすために、シンナーを吸っています。もちろん、シンナーを吸っているところを警察に見つかれば、補導の対象になります。また、シンナーの吸引は常習性が強く体に悪影響を及ぼす危険な行動です。しかし危険だと分かっていても、それに頼るしかないのです。
 路上で寝泊まりをする子どもは、店の軒下や歩道橋の下など、雨宿りができる場所を寝床に選びますが、人気の少ない墓地で寝泊まりをする子どももいるとのことです。墓地で寝泊まり、怖くないのでしょうか。「幽霊なんて怖くない。生きている人間の方がよっぽど怖い」。墓地で寝泊まりをする子どもの言葉です。
 「ストリートチルドレン」と聞くと、孤独なイメージを抱く方もいるかもしれませんが、路上で生活する仲間とともにグループ(組織)に属して生活している子どももいると清水氏は説明しました。グループは「ギャング」とも言えます。子どもたちは、属するギャングごとに異なるタトゥー(入れ墨)をいれていることも紹介されました。「タトゥー」は別の意味合いもあります。自分の名前を彫ることが路上で暮らす子どもや若者にとって「アイデンティティ」(自分の存在を証明すること)にもつながっていると、写真を映しながら説明されました。

 清水氏は、2003年にある墓地で出会った子どもとその後時を経て再会を果たしました。路上で暮らす子どもたちは、「ストリートチルドレン」とひとくくりにされることが多いため、過去偶然出会った子どもと再会できるという、ストリートチルドレンも「また会える」存在なのだと感じた時の話をされました。清水氏が路上で初めて出会ったときは、赤ん坊だったのですが、その後、少年にそして若者へと成長していました。

 フィリピンでは、子どもが路上で警察に補導されると、保護者がいればまず保護者に連絡し、子どもを迎えに来てもらいます。保護者がいない、もしくは保護者が対応しない場合、その子どもは青少年鑑別所に連れて行かれます。清水氏が活動する、国境なき子どもたちのスタッフが鑑別所内に入った時、夜間に出歩いていたことを理由に補導された女の子と、大人に頼まれて殺人を犯してしまった男の子が同じ施設内に入れられていました。こうした施設において子どものプライバシーが守られることは少なく、10代の女の子、男の子が近距離で過ごすこともあります。
 フィリピンにおける刑事責任年齢は現在15歳ですが、それを12歳へ引き下げる法改正案が出て、下院では既に可決されたと説明がありました。国境なき子どもたちスタッフが鑑別所で刑事責任年齢未満の子どもを発見した場合は、法的手続きを取り、団体が管理・運営する自立支援施設「若者の家」で保護し、衣食住の提供、心の成長のサポートを行います。人を信頼できなくなってしまった子どもの心に寄り添い、彼らの家族との関係を再構築するお手伝いは、決して簡単ではない、と話しました。それでも、「若者の家」スタッフに支えられ、勉強に、周りとの関係の修復に、一生懸命な子どもがいることを紹介しました。

 質疑応答では、子どもや若者の更生にかかる時間や更生後の支援内容等について質問がありました。清水氏によると、更生にかかる時間は子どもによりますが、家族との関係の修復一つをとっても、相当な時間がかかるとの説明でした。また、子どもたちを家族のもとに戻すことは一つの目標ですが、更生後の支援方法は子ども一人ひとりにより異なるとのことでした。
  「国境なき子どもたち」フィリピンでの詳細な活動情報はこちら


~ アジア・コミュニティ・センター21・辻本紀子氏~
 マニラ首都圏は、面積・人口ともに東京23区より少し大きい、フィリピンの首都です。このマニラ首都圏の路上で生活する子ども・若者の数は5~7.5万人と言われており、現地の活動家や政府関係者らによるとその数は年々増えているそうです。
 「ストリートチルドレン」はその特徴により、3つに分類されます。

tsujimoto1.png

 

 上記3つの中では子どもだけで路上生活を送る場合が、様々な理由から最もリスクが高い、と言われています。
 なぜ、こうした路上で暮らす子どもや家族が減らないのでしょうか。辻本氏の説明によると、まず、十分な教育を受けられず、仕事に就くための学歴やスキルがないことが挙げられます。そして、路上で育った子どもが大人になり、路上で家族をつくる。ストリートチルドレンの子どもが、新たなストリートチルドレンになるという実態があるとのことでした。

 アジア・コミュニティ・センター21では、2018年7月から「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」を通じて、路上で暮らす若者に、職業技術やライフスキル(日常生活の様々な問題に前向きに対処する力)、適切なお金の使い方等を学ぶためのトレーニングを提供するとともに、カウンセリングや様々なサポートを行っています。ただ、路上で暮らしてきた子どもや若者にとっては、こうした活動に参加し、スキルを身につけ、自立することは、簡単な道のりではないようです。

 家庭や学校で両親や先生に褒められ、目標を立て努力し、小さな成功体験を積み重ねた日本の子どもとは異なり、トレーニングを受ける場所に出かける、たったそれだけでも、路上で育った子どもにとっては大きな挑戦である、と辻本氏は説明しました。そのため、単に就職するためのスキルを身につけることにとどまらず、若者一人ひとり異なる家庭の問題や心の状態に応じ、総合的にサポートする事業となっているとのことです。
 また、2020年からは、小規模なビジネスの起業も選択肢となるよう、支援金の提供や起業トレーニングを通じて、若者の起業を支援しています。さらに、若者が事業を成功させるためにどのようなサポートが必要なのか、調査活動を開始したとのことです。

 「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」は2018年に開始し、現在までに37名がプロジェクトを修了し、うち18名が自営業を開始、27名が「国家資格Ⅱ類」(※)を取得することができました。数の上では大きな成果だと感じられない方がいるかもしれません。しかし、辻本氏が紹介した何人かの若者(修了生)のエピソードを通じて、プロジェクトに参加した一人ひとりが、それぞれ苦しい状況を乗り越え、「前向きになれた」、スキルを身につけて「屋根がある家に引っ越せた」と話していることを知り、一度に機会を与えられる人数に限りがあっても、参加する若者一人ひとりにきちんと成果が出る事業だとわかりました。  ※フィリピンの政府機関が公的に認めた職業能力基準

 質疑応答では、「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」に参加した若者の男女の割合や、起業のための支援金の提供の方法に関する質問があり、時と場合により男女のバランスが変わることなど、辻本氏が丁寧に回答しました。
       
「アジア・コミュニティ・センター21」ストリートチルドレン支援の詳細はこちら


0225gakushukai2.jpg 0225gakushukai1.jpg









 講師二人からの発表の後は学習会第2部として、自由な意見交換の時間をとりました。間接的にフィリピンの人々と関わった経験がある方、大学でストリートチルドレンについて勉強している学生、フィリピンに行って路上で暮らす子どもや若者と交流経験のある学生、公務員の方、社会課題の解決を目指した民間企業で働く方、大学で国際協力を教える教授など、それぞれの視点と経験から発言していただきました。

 意見交換の中では、「"家族のために働きたい"という子どものストーリーについて教えてほしい」、「子どもや若者の更生プログラムに関わるスタッフの育成方法について詳しく知りたい」といった質問が寄せられました。また、フィリピンと関わりのある参加者からは、「同じように施設で暮らす日本の子どもと比較すると、フィリピンの施設にいる子どもの自己肯定感や幸福度の方が高い、という調査結果をみたことがある」といった意見も出ました。

 路上で暮らす子どもや若者をこれ以上増やさないため、さらにはそうした子どもの数をゼロにするために、日本にいる私たちにもできることがあります。それは、まず「知ろう」と関心を持つこと、「知る機会」を求めて出かけ、「学んだことを共有、発信」し、自分なりに考えた解決への道を実践することなのかもしれません。JPNでは学びの「場」の提供を続けていきます。

                                             (報告:堀部)